音なしブギーナイト/
 
くと燃えている。本がどんどん頭から零れ落ちていく。ヘンゼルとグレーテル、痕跡を月に示しているようだけれど、少し迫ってきた陽光に簡単に焦がされる。インクの亡霊たちがミノフスキー粒子になって呪いをかけている。まじないごと、光は鬱屈しなければ直進する。月のニキビを探り当てるつもりだった。信号機が遠くで午前三時っぽい光を奏でる。暗闇と逆光の横断歩道だ。おれは虫眼鏡を取り出して、たばこに向けて、体が燃えるギリギリで火を付けて、歩き出した。宇宙の中の煙というのはどうにでも換えられるから、今朝読んだエロ漫画にしようと思ったらキリストになった、遠く、遠く、するとおれは歩き続けた。ずーっと、譫妄状態に似ている、体が
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