音なしブギーナイト/鯉
体がひっきりなしに宇宙とセックスしたがって、それを大きなひとたちが押し留めている、ヨシュアが浴びた香油の源泉をたどろうとすると、あの子の顔が浮かんでくるから、それはもうやめたことにした、真っ暗闇の赤ん坊が生まれる前に、それはコーンポタージュの缶にでも詰め込むことにした、地球は遠くて、青くて、うざったいくらいに緑の色がきれいで、おれは探査機に詰め込まれたロボットじゃないのかって思っても、寒い、それにしても寒かった、「ううああああ」とか声を出したら、それで息が凍ってひとのかたちになった。落語の一節を思い出して、それからまた歩き始めた。歌も凍ってしまう絶対零度で、魂を呼べばそれが震えて声だと勘違いしちゃうくらいの静けさ、足音は響かないから、自分の脳みその血流だけが、ビートの便りだった。
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