音なしブギーナイト/鯉
いと彼女が言っていたのを思い出したぼくは歩き始めた。月の長い海が死体のように横たわっている。突き刺さったポインセチアがふらふら嵐でのたうつのが見て取れる。鉄風がギュインギュイン螺子巻きのかみそりみたく音を立てて肉体を揺らがせる。月の地面は、砂浜で、冷たいのが通り越して熱くなる。ぼくは遠くに向かって歩いている。大きく股を開いた太陽の息遣いが聞こえなくなるように、歴史を忘れるように歩いている。たばこの火は花火みたいにしばしば驚かせた。投げ捨てていくとそれがどんどん伸びていって地球に向かっていく。おれはそうすると気が大きくなった。埋立地の建築が沈んでいく気分がした。酒を飲んでも、凍っているから噛み砕くと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)