「沈黙」についてのノート--ヴィトゲンシュタイン、G.スタイナー、石原吉郎の「沈黙」/N.K.
なかった。ベルゼンやアウシュビッツという経験に対して亡命したり、ナチズムを生き延びた多くのドイツ作家は、自分たちが絶望を覚えたと言う文脈の中で、G.スタイナーは「語りえぬものについては人は沈黙せねばならない」というヴィトゲンシュタインの言を引用するが、「言語におけるこの死の感覚、非人間的なものを目にしての言葉の失敗の感覚」と続けてこのことを捕えながら、にもかかわらず、学者であり批評家であるG.スタイナーは、沈黙という言葉を待つ。「現在あふれるように出版されている作品のいくつが本当に言葉らしい言葉になるだろうか?そしてその変容を聞こうとするならばどこにその必要とされる沈黙があるだろうか?」とさらに問
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