「沈黙」についてのノート--ヴィトゲンシュタイン、G.スタイナー、石原吉郎の「沈黙」/N.K.
 
・・・おそらく部分的沈黙の時代相へと移行しつつあるのではないのだろうか」と述べるように状況を捉えるに至った、G.スタイナーという知の巨人が、言語と沈黙というテーマを扱っているのを本当に遅ればせながら知った。
 G.スタイナーによって、自分が戦後の詩について漠然と考えていたこと、つまり戦後詩は、前提であった戦争が抜け落ちて行き、言語自体に主題を求めるようになっていったというようなことが、科学と日常言語の総体であった文学の間でも起こっており、そのことは、文学が文学を問題にするようになったと言うよりは、科学がその精緻で体系的な言語を獲得していく過程で、日常言語すなわち文学から乖離していった大きな流れの
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