雑草の花・鯨の皮膚/高濱
 
胚の様であった。



種子の成長が停止する。
卵が楕円の影を落し、
円卓の水差は銀製の工場から羽ばたき、
果実皿には血塗れの肝臓が脈打ち、
鷲鳥の羽根が壁に釘打たれている。

二十日鼠の水死体が何か美しく膨れ上がる。 
鉄道職員は警笛を鳴らしながら、蒲公英を吹き散らす。
雉鳩のソテーが鉄路の上に置かれている。

旧官邸をオレンジの果樹園に変えたのは
一瞬のカーテンが裏返る窓辺の蔓に咲く雑草の花々が燃え上り
青い炎の円を白い画布に描くのを監査員が赦さなかったから。

監舎の窓は閉ざされていた。鳩が足と羽根を奪われて鳴いていた。
地獄には鳥はいないと語る収監者が
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