岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
り拒否したりという態度を取らず、態度を留保しています。
さて、このような留保の姿勢は詩にとって本質的です。
張りつめた対峙の中でサディストは苛立つ。かれは対象を分析的にではなく、一挙に把握したいのだが、そうしようと焦れば焦るほどかれの対象は霧に包まれ始める。それは存在の不明瞭さから湧きあがってくる霧であるのかもしれない。(「サディストの苦悶」より)
ここにおいて、「サディスト」とは詩を書く者のことです。詩を書くものは対象を一挙に把握しようとするため、逆に対象をあいまいにしかとらえられない。対象は隅々までよく見えて理解できるものではなく、不透明で、それについての判断を下しがたいもの
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