花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように/AB(なかほど)
り返ると
老人はやはり
居眠りのふりをして
陽だまりの停留所
2 星待ち
「家へ帰ろう」星空を見ながら、つぶやいた仕事場からの帰り道。深呼吸ひとつ。「久しぶりだな、こんなによく見えるのは」とまたつぶやいて、半分酔ったままで、大崎で見た星を見ていた。朝になれば、またいつもの顔で白いワイシャツにそでを通し、鏡の前で「今日もいけるか」って顔するんだろう。笑顔つくって「行ってきます」って言って、坂道下りて、電車に揺られて。なだらかな坂道を早足で歩き続けるような、そんな暮らしの中で、どんな空を待っているのかさえ忘れたつもりで。日が暮れればまたいつもの顔で、トイレの側で一
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)