花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように/AB(なかほど)
 
で一服ついて、鏡の前で「もういいか」って帰り支度の顔して、笑顔つくって「おつかれ」って言って、階段下りて、電車に揺られて。悪くない、今の暮らしは。愛してる、妻や子供達を。でも、それでも半分酔った帰り道に思うんだ。「帰りたい」あの空の下に帰りたい。あの星の空の下に帰りたい。あの街の星の空の下、の安いアパートの部屋の窓、から見上げていた星座、の名前さえも知らない、くせに夢は抱えたつもり、の物も知らない世間知らずの馬鹿、に帰りたい。帰りたい。あの空の下に帰りたい。電車下りて、坂道上って、笑顔つくって「ただいま」って言えば、星はもう。




3 声待ち


毎年この日の夜には
上原君の
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