自殺ホテル/吉岡孝次
殺客も減るってか。で、廃業に追い込まれると。自殺ホテル最後の利用者はオーナーでした、というオチだったりして)
エレベータでも廊下でも誰にも会わなかったが、周囲の部屋に客がいてもおかしくはない。こうして寝転んで天井を眺めながら連想に興じている間にも、各々のやり方で、各々の人生に幕を引いているのだろうか。そこに想到すると、彼の胸中に自己嫌悪の念が湧いて来た。
(我ながら悪趣味なことをしに来たものだ)
(ころしに来たものだ)
(しに来た)
夢の中で、礼二は目を醒した。目を醒した、という夢の中にいることは自覚できていた。
(いつも通り、無茶できるわけだ)
時刻は午前零時。ドア
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