自殺ホテル/吉岡孝次
 
れないので、料金が前払い制なのは、まあ当然と言えば当然であろうと彼も考えた。
 普通のホテルと違うのはそれくらい、だったはずだった。
 部屋は、何と言うか、素晴らしかった。内装が豪華だとか眺望がロマンチックだとかいうのではない。入室前は、もっと凄惨な、おどろおどろしい、いかにもといった気味悪さを思い描いていたのだが、怪談めいたものは全く影も形もなく、ただただ清潔で心地よく清々しかった。最期のときを快適に迎えてもらいたい、そんなホテルのもてなしの心映えをさえ思った。
 (リピーターがいてもおかしくないな。すると自殺客に回す部屋が削られるわけだ。結果、サービスの質が落ちてゆき、リピーターも自殺客
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