自殺ホテル/吉岡孝次
 
や虫に喰われたあげく排泄物にされたくない、といったインドア志向は厳として存在した。そんな自殺者たちの最期の願いを叶えるられる場所として「ホテル・ニルヴァーナ」(通称「自殺ホテル」)は、半ばネット上の都市伝説と化しつつも、自殺者たちの志向と同様に厳然と存在し、そして自殺者たちの営みと同様に年中無休で営業していたのである。


 フロントで料金を前払いすると、カード・キーが渡された。事後の後始末に掛かる手数料分とこの期に及んで倹約に努める必要のなくなった利用者の気前良さが上乗せされた料金は、やはり割高に思えた。礼二のような一般客も宿泊できるが、それでも夜中に気が変わって事に及んだりするかもしれな
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