ソロ、テンペスト/マクベス
 
ば、一歳の子供がいること、「こんな時代に生まれてくる子供も大変だよね」と、まるで他人事みたいに呟いたきりでそれ以上興味深い話を引き出すのは無理だった。
あとは流れで仲間の仕事や恋の話に合わせて笑っているようで坂口としては消化不良といった面持ちだった。

酒の席がお開きになったあとの安田の帰りの電車は家族の待つ自宅へ向かういつもの電車とは違う車両だった。
いつからかそうするようになったのか、一人になりたいときは決まって海を眺めに来ていた。これは誰にも話していない。
空は雨を降らせそうな鈍い色の雲が覆って夜の海をさらに暗くしている。
安田は浜辺でセブンスターを取り出して火を点ける。喫煙家に
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