ミナモ/mugi
 
namo 2011-2012







◆1

それは手書きの夏で、ざらついたわら半紙のうえをはしる、すずしげな鉛筆の音と、となりの部屋から
もれてくる掠れたラジオのおとと、味のすっかり抜けきったミントのガムと、額をすべるひとすじの汗
のための素描で、少年はビニールのサンダルをつっかけて表へでる、夜明けまでつづいた大雨が、路上
のあちこちに水たまりをつくっている、きれぎれに、青空を写しこみ、それぞれが、独立したスクリー
ンのようで、視覚は映画のように編集されている、少年はすくなくとも2つ以上の自己を同時に抱えて
いる、つまり、物語のなかのボクと、物語のそ
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