「埋葬」/ベンジャミン
昨日のわたしを丁寧に埋葬する
それはやはりひとつの儀式として
今のわたしの内側には
そうやって埋葬されたいくつもの棺が
記憶と名付けられて並べられているのだ
さようなら、昨日や、あの時の、過去に起立する、わたし
さようなら、再び、思い返すまでの、約束されない、わたし
※
蟻の巣の入り口に取り残された蝶の羽のようだったら
ずるいと思えるほどに美しいのかもしれないけれど
蝶は大切な心の置き場所を失ってしまったのだから
わたしはきっとまだ幸せなのだと思う
埋葬されたわたしの亡骸はいつまでも朽ちないで
なのにだんだんと透明になってしまう
鮮明な色の蝶の
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