「埋葬」/ベンジャミン
蝶の羽はいつの間にか無くなるのに
それはこうしてはっきりと思い出せる
※
土の匂いが恋しいと思うことがある
それはわたしがわたしを埋葬する前のことで
今はテーブルの上に置かれた紅茶の香りに忘れている
あるとき初夏の風に吹かれていたわたしは
緑色の絨毯の中にぽつんぽつんと咲く
名前も知らない花を見て
あれはもしかしたら
今までにわたしが埋葬したもののかたちかもしれないと
そっと近づいてみるのだけれど
その花はいずれ散ってしまうことを
どうしてわたしに教えてくれないのだろう
それさえも埋葬してしまうわたしに
束の間、立ち止まることもなく
わたしは歩き続けてしまう
戻る 編 削 Point(8)