「埋葬」/ベンジャミン
 
蝶の羽はいつの間にか無くなるのに
それはこうしてはっきりと思い出せる

   ※

土の匂いが恋しいと思うことがある
それはわたしがわたしを埋葬する前のことで
今はテーブルの上に置かれた紅茶の香りに忘れている

あるとき初夏の風に吹かれていたわたしは
緑色の絨毯の中にぽつんぽつんと咲く
名前も知らない花を見て

あれはもしかしたら
今までにわたしが埋葬したもののかたちかもしれないと
そっと近づいてみるのだけれど

その花はいずれ散ってしまうことを
どうしてわたしに教えてくれないのだろう

それさえも埋葬してしまうわたしに
束の間、立ち止まることもなく

わたしは歩き続けてしまう
  
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