行方/山人
、濁った水が足元をぼかしてゆく
それは冷たく汗腺から温度が入り込んで、私の内なる骨に衝突する
水の冷たさは、毛細管現象のように、脛をつたい上部へとあがっていく
胸の中央にひとつ、硬く鐘を打ち、潰えた羽虫のように転がっている
小低木の枝から這い出した葉が湖面に触れている
だらしなく波は葉を濡らし、風でこなごなにされた木片の残片や、木の葉の残骸が、縁の暗黒につぶやくように沈んでいる
指を折り、数をそろえるのは造作もない
ふてくされた期日に折り合いをつけてページを綴じれば夜が来る
それから私はただ、漂白されて、白くもない、色の無い実態となる
沼岸からあがり、ひとつ、また
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