推定無罪/
 
ション、かの女は霊感少女のシャーマンだった
 
 生まれは灰皿、育ちは空中、死んだのは注射器の中
 奥二重の瞼が虫っぽくぴくぴくして、睫毛が飛び出して歩いてきそうなかの女
 髪は紫で、わざとブロンドにするのを失敗したかの女
 残響の、やけに残る声を惜しげもなく煙を吐くことに使い果たしたかの女

 あいつの名前をおれは知らない。「知ってるくせに」、暗闇のような声。けれど挙動はどこに行ったのかわからない。ここはたばこを吸う度にしか顕現しない。ぼんやりと抜け殻が見える。水に一滴だけ入れた墨汁みたいにふらふらした死骸の手足からは、キャスターみたいなにおいがした。消えた。

 瞬いている。
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