許諾/HAL
 
砂漠に生きるものたちだけが持つ
本能が待っていた雨が降るのを知らせた

やっと待ち焦がれた雨が降り始めると
ぼくの心まで沁み込む雨が降り始めると

ぼくの心を苦しめてきた細菌が
ひとつまたひとつと殺されていく

ぼくの焦燥感が消えていく
嫌悪しつづけた憎しみや後悔や痛苦などの
諸々が削え去っていく

ざらついていた心の襞が
イルカの皮膚のように滑らかになっていく
重かった得体の知れない何かが軽くなっていく

時の冷酷に削られないものの為に
歳月とともに揺るがない碓たる芯を持ち
未来永劫変わらぬものに身も心も委ねたいと云う
ぼくの長く抱きつづけた望みが叶えられ
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