許諾/HAL
 
られる

ぼくは何も求めず雨を待った
ぼくは何も救わず雨を待った
ぼくは愛も欲せず雨を待った

希望も夢さえいらなかった
過去を懐かしがらなかった
未来に期待も抱かなかった

戒律に脅されなかった
快楽に誘われなかった

欲望に溺れなかった
高潔に怯えなかった

淀まなかった
沈まなかった

徒党を組まなかった
孤独を恐れなかった

否定に抗った
肯定に頷いた

その恩寵かの様に
降る雨の一雫によって

ぼくを形成している60兆の
細胞膜がひとつずつ失われ
細胞核がひとつに溶け合い

そしてひとつの細胞だけのぼくになり
そのために21,900日待ちつづけた
雨がいま洪水になる為に降りつづけ

その雨雫の一滴となって甦ることが 
やがてぼくに許諾される時が訪れる
戻る   Point(6)