春の海で眠りたい/AquArium
 

わたしは傘を捨てるしかなくて
息を切らして走る
後ろの君たちは傘を優しく拾ってくれた

玄関をあけると
立っていた夢にまで見た人
昇華してくれと願いながら
すべてが嘘になった深夜の
ハルシオンは効いてくれない



ああ
都合よくトリミングされた世界で
屈託のなさだけが売りだった
それは身の丈にも合わない
窮屈で惨めな事実を隠していただけで


ああ
触れた腕が冷たくて
浮き出した血管に流れている
異質の血液、それだけで解りきっている
埋められない溝の深さ


ああ
君の海は泳ぐには濁りすぎていた
冬を理由に裸足にならなかった
それ
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