憂鬱録より “火”/kaz.
、同様に部分でしかな
いからだ。そうしたものに思索を向けていなければならないほど、私は掻き乱されていた。
顔面筋肉の緊張と弛緩の領域、つまり表情を作った部分と作ろうとする部分が、モザイク
状に配列され、隣り合い、お互いに浸蝕しながら共存している。あたかも虚像が真実を覆
い隠すかの如く。それが恐ろしかった。
しくしく啜り泣く声。吊され、逆さまになった顎の輪郭に沿ってできた渓流が、髪から滴
り落ちていく。その肌は耳まで赤い。その源流は股間から波打つように震え、垂れていく。
オナニーの最中におしっこを漏らしてしまった、うぶな娘の様。苦い表情は尿に洗い流さ
れていく。私は動脈のある部分
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