憂鬱録より “火”/kaz.
部分に針を刺す。血の噴水が顔に掛かり、女はまだ生きている、
視界は仄かに紅く遮られ、血塗られた窓の向こうの景色であるかのように錯覚する。遠近
感が失われていた。何か、途方もなく遠いものさえ、私の手元に、そう、この女の肉体に!
この細い肉体が私にとっての真理ならば、どうしてその束縛に癒されるのだろう。“それ
は女が真理ではないからだ。女は、もはや形骸である。女というのは一つの形式である。”
という声。だが、私は否定しよう、これは真理だと。真理、それは血の美しさだ。血のも
つ、硬質な感じ、それはヘモグロビンの構造の中心から回帰する鉄の記憶、つまり歴史な
のだ。この血の中には悠久の時が流
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