未完詩/桐原 真
 
あなたはもう、ほとんど
目を開けたりはしないけれども)


窓の隙間から
ゆびの隙間から
心と身体の隙間から
現実と、つま先の隙間から

昔の季節の、笑い声が
こぼれては跳ねる

ぱらん
ぽろん
ぱらん、



(これから、
どこを目指して旅立つのでしょうか)





手首には
あなたが大切にした秒針の代わりに、
名前と血脈

でもほんとうは、
名前など必要なかったのでしょう?



(そこいらじゅうに
跳ねている音の、予定調和)



ときどき、
空っぽ波音が
笑っているのね

幸せだったと、言わんばかりに
[次のページ]
戻る   Point(2)