未完詩/桐原 真
あなたはもう、ほとんど
目を開けたりはしないけれども)
窓の隙間から
ゆびの隙間から
心と身体の隙間から
現実と、つま先の隙間から
昔の季節の、笑い声が
こぼれては跳ねる
ぱらん
ぽろん
ぱらん、
(これから、
どこを目指して旅立つのでしょうか)
*
手首には
あなたが大切にした秒針の代わりに、
名前と血脈
でもほんとうは、
名前など必要なかったのでしょう?
(そこいらじゅうに
跳ねている音の、予定調和)
ときどき、
空っぽ波音が
笑っているのね
幸せだったと、言わんばかりに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)