未完詩/桐原 真
失う/失われることについて
あるいは、
手付かずの真夜中の数え方について
「いずれにしても、
ものさしは秒針だけだよ」
と、あなたは言った
頬をすくうような風もまた、
朗らかな影のような過去となる
今は
春先の午後
(とびらを少しだけ開け放していたのは、
誰だったのでしょうか)
でも
ほんとうは、あなた
名前など持っていなかったんでしょう?
*
ときどき、
空っぽの波音が
笑っているのね
ここは角部屋
南西からの日射しのなかで
すっかり浮腫んだあたたかな手を
きゅっと握っている
(あな
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