眠らない街の眠らない人々/ブライアン
 
り残されて、気が付いた時には道路で寝ていた。真っ暗な田んぼの真ん中で蛙の声を聴いていた。夏の湿った空気が肌に触れる。蚊の飛ぶ音が耳元でしていた。畦道の草が鼻元に触れる。酸っぱいにおいがした。青春は酸っぱいだけだ。
 隣で寝ていた男は、終着駅の三つ前の駅で降りたに違いない。そこは住宅地で、夜遅くまでスーパーををやっている。蛍光灯にともされたスーパーの店内をアルコールのにおいを携え、男は弁当を探す。まだ眠い。目がうまく開かない。男は迷わず惣菜売り場へ向かい、弁当を手に取る。売り場にはほとんど商品はない。
 男が店を出ると街が静かのことに気が付く。いつも見ている街なのに、と男は思う。年を取って情緒的
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