眠らない街の眠らない人々/ブライアン
 
の声は息継ぎのために弱々しくなる。そのとき、川の流れが聞こえてくる。肥料のにおいが鼻につく。足の裏に重力を感じる。まっすぐ、下に縛り付けようとする、強い力だ。目をつむり、呼吸を整えよう。肥料の匂いが肺に満ちてくる。騒々しい声。けれど匂いが、声を空気に変えてしまう。吸い込み、吐き出す。

 電車はようやく最初の駅に停まった。多くの人が降りた。詰め込まれていた人が肩の力を抜いたのがわかる。身近な人との距離が少し開き、お互いの顔を見れるようになる。腰に回したてもほどかれている。女は、男の顔を見てさっきまで話していたことの続きを話し出す。男は電車から流れ出ていく人を目で追っていた。
 再び電車の扉が
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