プリズム系地獄/
 
腕を引き抜いて灯油缶の中に詰め込むと、こればっかりは変わらない、艶めいた髪がちりちり焦げて枯れ木に向かって飛んでいった。馬鹿らしい枯れ葉が逢瀬すると灯油缶のひしめきがわずかに漏れた。何十本も詰まったあたしの手足がセルロイドみたいにどろどろに溶けていく。すでに灯油缶は十を越えていて、けれど日は暮れなかった。

もはや数えるべきではなかった死体の数はだれかとしたキスの数と同じだった。セックスの回数だけ赤ん坊が生まれるというのはあるかもしれないけれどキスをする度に人身事故だなんて聞いたことがないあたしはかさかさした肌を撫でつけるばかりだった。唇は堅くて、にも関わらず緩くカーブを描いているからだれかの
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