食卓/
 
海が壊れていた




卵を殺す
そんな思いを込めて
卵を割り 殻を捨て
気味の悪い液体を調理して
美味しそうな料理を生み出す

それが人という生き物だと
テレビの中に並べられた書物が言う

知識がもたらした豊かさの中で
背中のかゆみに耐えかねて 
考えるのをやめる二月の午後
その全てを包み込むようにして 海は壊れていく




泳ぐのが死ぬほど嫌いであるのに
波間に漂う自分を思い浮かべてしまうのは何故か

空腹が 
仰向けになった体を浮かす
遠くの島からは 
親鳥を失った卵が
いくつもいくつも もがきながらこちらへ向かってくる
何匹も何
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