夜行/HAL
また列車は停まらず通過していった
もう何本の列車が通過していったことだろう
早朝からプラットホームに立ちつづけて
もう陽は落ちようとしているのに
どの列車も眼の前を速度を落とすことはなく
猛スピードで風だけを巻き起こし通過していく
切符は持っているけど時刻の記載はなかった
待つ乗客も駅員もだれひとりいなかった
ぼくは間違ってしまったのだろうか
そう想いながら切符を見てみる
日付は間違ってはいない
指定席の番号も載っている
数日前に届いた差出人のない封筒に
入っていた日付だけで時刻の記載のない小さな切符
そのなかにはこの切符しか入ってはいなかっ
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