レモンの花が咲くところ/コーリャ
しくてね」と彼は言った。ちゃんと探したのか?とたずねると彼はスマートに笑った。
・僕たちは二年かけてたくさんの芝生を刈った。
そろそろ終わりにしようと彼が言った。たしかにアルバムの紙幅も少なくなっていた。僕はゆっくり頷いた。最後の芝生。風の強い日。雲が早送り再生され、さまざまな生物の架空の進化図を示しながら流れていた。裏庭の一番奥には、小さな物置があり、その屋根に老いた果樹の梢が寄りかかっていた。日曜なのに街は無人だった。猫すらいなかった。不気味で静かな庭だった。
・刈り終えたころに天気雨が降りはじめた。
早く済ませてしまおう。彼がカメラを手にとる。そこで彼は凍りついてしま
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