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な気さえする。
 わたしは時計がどこにもないのにかすかにいらだっていた。じ、じじ、じー、じじ。と鳴く明かりの横でごうごう言うパイプが真っ直ぐに伸びている。
「コウタくんはさ、あたしがきっときらいなんだ」
 唐突に由美子が言った。そしてまた、それを反復していた。
 わたしは少し歩を緩めて、由美子の低い鼻が向かった先を想いながら応えを返した。
「きらいなわけではないんじゃないの」
「きらいなんだよ。だってあたしが声を上げてもなにも言わないし、コウタくん、って呼んでも返してくれないんだもん。だからもう歩かなくていいんじゃないかな、って思ってる」
「声を出さないからって、きらいなわけじゃない
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