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 蛍光灯が点滅して雨のように散りばめられる中でわたしは歩いていた。
 「昨日のテレビどうだった?」と由美子が繰り返している中で、彼女の頬と同じ色をしたコンクリートの床が音を立てている。配水管や電気のコードの絡まった天井の配線を眺めながら「見てない」、とだけ返すと、由美子はまた「昨日のテレビどうだった?」と聞いた。わたしはかの女が裸足だったのを思い出した。別にどうってことはないけれど。ぺたぺたと粘土細工を作る音に似たそれをいやに反響させながら、由美子はフリルの付いたウェディングドレスの裾をちらちら気にしている。死んだ土の道は長く、時折向こう側の蛍光灯が消えると、このままずっと歩き続けていくような気
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