新春お年玉セット/たま
言ってやると
それっきり
追いかけてこなかった
半日歩いても
道はまだ真っすぐだったから
もう一度ふり返ると
あいつは
身を伏せたまま
滲んだ地平線の上にいた
ぼくは立ち止まって
眼を細めていたら
あいつは
ゆっくり沈んで見えなくなった
赤い犬だった
牛馬童子
昔、むかし
熊野のふかい山のなかに
抱きあうようにしてのびる二本の杉の木があって
里のひとたちは夫婦杉と呼んでいました
夫婦杉の根元にはちいさな巣穴があって
いっぴきの子狐が棲んでいました
凍てついた真冬の夜のしたで子狐はひもじいお腹をかかえて
まんまるい月を見あ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(23)