新春お年玉セット/たま
 
見あげていました

 お月さまから白いお餅がおちてこないかのぉ。

 あ・・。

子狐はふっと、なにかを思い出したように
ふかい雪のなかを山里のみえる峠まで一気に駆けていきました

峠には牛と馬にまたがった童子のちいさな地蔵があって
地蔵の前にはいつも里のひとたちが供える
紅いとち餅がありました

 のぉ、ひとつやらんか。

子狐は童子に紅いとち餅をねだったのです
童子はくすっと笑って言いました

 千年たったら一本になる二本はなぁに?
 答えたらあげるよ。

子狐は首をひねってウンウンうなったけどわかりません

 ほら、おまえがねぐらにしている夫婦杉だよ。
 しっかり守ると約束したら餅をあげよう。

 うん。 約束するよ。


そうして子狐は千年生きて杉を守ったのです
夫婦杉はいつかしか一本のおおきな杉の木になって
いまでは平安杉と呼ばれています









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