終りの季節/DNA
 
クに住む姉弟とその家族の生活に巻き込まれていく。この一家族は、街の開発に反対し、バラックを終の棲家とすることを決め込んだ部落の人間であるのだが、男はその「被差別」という否定性に魅かれていく訳でもなく、かといってそれを肯定性に転化して関係を取り結んでいく訳でもない。ただただ、その家族に巻き込まれ、自らの欲望(千夏という姉への欲情)を単純に肯定していくのだった。ここに至る過程には、それまでの人生で培ってきたバランス感覚と、それを意味のないものと考えるある種の捨て鉢な態度が混在している。そこが、この小説の最大の魅力といっても良いだろう。

確かに、人物の造形のうえで文句をつけたくなるところはある。こ
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