終りの季節/DNA
にやってくる、ひとつひとつの出来事や出合いに必死になって対処し、関わっていくだけであり、それはほとんど苦悶であり、幸福といったものとは程遠い。仮に、幸福であり、稀有であると感じられるとしたら、それは既に過去として、凝固された後だ。
佐藤泰志の件の小説においては、そういった詩情の季節の終りが描かれている。
青春の終る季節。その過渡期の描き方として、非常に説得力があるように感じた。
主人公の男は、まるで受け身である。身を賭すことをすでに諦め、かといって何か新しいものを待望する(そんなものはやって来はしないのだ)訳でもない。たまたま、パチンコ屋で百円ライターをやったという縁から、バラックに
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