冬とケロイド/いかりはじめ
つたのかもしれない
みあげれば月が野蛮にあかるく みしととじた窓から しんしんと クレンザーのような光が圧(お)しはひつてくる
くちびるを ぶちぶち とさくような 音がする きがする 豆の腐つたようないろ に 染められてゆく きがする
かぼそくもろい星たちは干からび体温をうばわれて 密(ひ)つそりと 堕ちてゆくほかないのでしょうか
あなた
わたしは ここにいます あなたのケロイドをおもひ ひとり 夜をやすりで削つています 空気は冬のよどみで粉つぽく 気管支は錆び 寂び 寂び 寂び
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