河川敷/mad.rabby
存在だ。
必死になって振り回してた虫取り網が、今じゃ物置で錆び付いている。
いつから、見えてたものは見えなくなって、見たくないものばっかりみえるよなぁ。
「むかし、私花屋さんになりたかったの」
沈黙を破った三浦さんの震えた声が虚しさを加速させていく。ぼくは興味なさそうに「ふーん」と言った。
振り向けばペンを握ったぼくが、ペン先をぼくに刺そうとしてるように思えて、ぼくは俯いて石ころを蹴っ飛ばした。
過去ってのが縛り付けているけど、色褪せた思い出ってのが忘れられなくて、今も小さい頃の気持ちってのが、ほんと忘れられなくて。
転がる石みたいに、ちっぽけでありきたりな過去が、
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