案山子/寒雪
 
いつの頃からか
崖の上から見下ろす
ささくれだった土の
触れると血が止まらなくなるような
眼前に広がる荒野の地表
反吐が出る光景を
瞬きもせずに見つめるのが
当たり前だと思っていた
震えるような月の白
苛立つような夕の紅
凍えるような朝の蒼
繰り返し繰り返し
明けては暮れる毎日


いつの頃からか
思い返してみても思い出せないけど
荒野の中央に二本足で
しっかりと踏ん張っている
後姿の案山子がいる
案山子が現れてしばらくすると
足元から荒野の表面に
うっすらと草が生え
緩やかに草原へと変わっていく
なにが起きたのかわからず
戸惑っていると案山子は
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