案山子/寒雪
 

首を無様に振り向けてぼくにウインク
その時ぼくは
案山子のそばで肩を組んで
飲めない酒を酌み交わして
いつまでも柔らかい草の感触を確かめながら
笑顔でずっとそこにいたいと思っていた


いつまでも川の流れは
いつまでも風の流れは
いつまでも雲の流れは同じじゃなくて
少しずつ変わり行く生命の姿を
ぼくの勘の悪い目では
気付くことが出来なくて


いつの頃からか
草原は荒野に戻っていて
今まで以上に冷たい視線を感じながら
激しく吹き荒ぶ風雨を
傘もないままに
雫を手で払いのけながら
ただ見つめている
真ん中でぼくに目映い光を教えてくれた
あの二本足な案山子はもういない
それだけでぼくの世界は
こんなにも荒れ狂っている
今見下ろしてる景色を
辛い気持ちを抱え込みながら
それでも以前の暖かい空気が
頬に触れた時のことを思い出して
折れそうになる膝を励まして
なんとかぼくは今日もこうして立ち続けている
明日どうなるかはぼくにもわからないけど
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