三本目/根岸 薫
 
いたはずなのに
   どうしてなのかと
   聞くと
   ただ笑って
   「遠かったよ」
   と言うので
   叱られるのをおそれたわたしは
   素早く翼を広げて
   飛び立ってしまった
   山を越えて
   みなとにおりたったとき
   そこには
   またT、がいた
   「お前に近く」


六本目の隣の指が
八本目だったと思う
Tの脚はわからない
わたしの指だけ
八本だと思う


   それからわたしたちは
   一緒に家へ帰った
   みなとから船が出ていたのだ
   そして電車に乗り
   家へ着いたとき
   わたしは
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