Luca/Lily Philia
んかいない。
レースのカーテンのひるがえる
やわらかいまたたきのなか、
しろくしろく
とぎれることのない
なみのゆきき。
ルカが佇むのは、
いつも音のしない水辺。
天国がここにあらわれたら
きっとルカの足許さえも
浚ってしまう。
ルカは決してなかない。
あたしはルカのなきごえを聴いたことがない。
ルカのひだりめが
パチリとあたしを影絵にしてしまって、
それから、
ルカのその長いまつげが
あたしをしっかりと掴んだ。
それがチカチカする始まりの合図。
ねぇ、ルカ?
ねぇ、ルカ?
思い出のなか
迷子になってしまいそうよ。
胸の前で小さく十字をきる
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