童心/Lily Philia
 
せたまま待ち続けていたい



 あたしが
 生まれる前から
 ずっとずっと
 あらゆるその
 小さかったであろう掌に
 握られた名前と日付に
 思い煩っていたい
 
 父にだっこされた瞬間
 近づいた
 果てない空の底ひ
 幾重にも織られ
 生き埋めになっていった
 あたしの声に
 気づくものもなくて
 
 胸許ではがゆく
 また無闇に
 擦り抜けていった花びらの
 かぐわしい残り香を
 まだ憶えている

 ささやかな祈りを
 今日も捧げている
 母のよこがお
 そのやわらかな目許へ
 寝そべった疲労の
 意味さえ


曇った硝
[次のページ]
戻る   Point(2)