君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
 
も見える。ここはどこにでもあるどこか。隣の男性がスマートフォンから目を離す。あたりを見回す女性に視線を向ける。電車が揺れる。車内アナウンスが揺れに注意を促していた。誰もそれを聞いてはいなかったので、皆がぎゅうぎゅうに詰まった車内で大きくよろめいた。ここはどこだろう。彼女はまだどこか分からない。
 
 目が覚めたとき、どこでもないどこか、にたどり着いていた。あたりは木々に囲まれているが、それらの木々は見たことがない。誰かはそれをきのこと呼ぶだろうし、違う人はそれをアオカビというかもしれない。川が流れているのだが、川には水が流れていない。魚が鳥のように羽を伸ばし、川を泳いでいる。バナナを持った百姓
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