八柱腰折れ屋敷十字舎房/一番絞り
 
座させられながら、膝頭が凍えてきしむ音をじっと聞いていた。
外観の豊かさに比して内部はおどろくほど簡素だったのだ。
獄房回廊の機能一点張りの空洞を─それは大昔に絶滅した恐竜の胸骨のような剥き出しの骨組みと、分厚い鉄扉と、かつては白で塗られた壁でできていた─
まるで幽霊の咽喉だとKはおもった。
Gはこの八柱腰折れ屋敷十字舎房を〈お伽の国〉としてつくったのだ、と文献は記している。
いまでいうオタクだった。
この上なく冷徹な、機能一点張りの刑務所を夢のような童話のイメージで飾ろうとしたのだ。
小菅刑務所の囚人に製造させた色鮮やかな紅蓮のレンガひとつひとつにこの屋敷のイニシャルを
刻印させ
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