秋が来おった/一 二
「もう秋だ」
誰に言うでもなく
ただ、ポツリ、一人呟く
風がだんだん冷たくなり
空気が澄んで空が高くなるのが
誰にも言われずにわかる
スーパーでレジ打ちのバイトをしているが
クーラーの要らなくなった
食品の陳列棚の冷蔵の風がとても寒い
夕方は夫婦やカップルが
イチャイチャしながら買い物をする
俺は「こう、なれない」
と鬱になる
夜は気だるそうな、おじさんが
半額シールの着いた惣菜や弁当を買う
俺は「仲間だ」と思い
他愛の無い世間話を切り出す
何人かと顔見知りになったが
名前は知らない
バイトを終え
家路を急げば、
まだ冬は遠いと
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