十月の童話/salco
に
うららの午睡めいた佇まいがあり
あの冬の臨時休館日
図書整理を終えて裏門を出しな
後ろから口を塞がれて
横手の建設現場へ連れ込まれたのです
後を出て来た同僚達はさざめきながら
誰一人
いつも独りで帰る女が先に見えぬのを
気にも留めませんでした
いつも独りを好む女が出て来ないのを
気に留めもしただけで
広告と請求書が詰まったドアを
不動産屋が開くと郷里のふた親は
整然とした日常の放置に今こそ世界が
真っ黒な雲で塞がれたのを知りました
捜索願に捜査機関が動いた時には
青葉を背に紅い鉄骨がそびえ立ち
同僚達は聴取に首を傾げるばかり
田舎にでも帰ったのだと決め
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