彼女の海/ゆえ
彼女の周りに纏わりつく空気を、少しでも肺に落とし込もうとする。
深く吸って、息を止めて、収縮する器官の中に彼女を取り込もうとする。
植物のように。細胞のように。世界のように。
何度も。
何度も。
彼女は眩しそうに目を細めて遠くを見つめている。
僕の中で何かが膨張する。
一杯に膨らんで、やがては萎んでいく。
波が打ち寄せる、満ちては引き、途切れることなく続いていく。
彼女の中で何かが構築される。
高く緻密に構築され、やがては破壊される。
彼女は想像する、創造する、それを自らの手で粉々に砕く。
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その瞬間の彼女はいつも、僕を止め処なく独りに
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