七坂心中/paean
 
タンクの入り口をがががっと割って、覗いてみる。油が残っているはずだ。

 みんな、という言葉は大抵まちがって使われる。「みんな」から弾きだされたものたちが、その尻を追って鉄刺林にむらがっている。追えなくなったものたちは、それがどういうやりかたにしろ、死ぬ。身体的に、社会的に。

 彼らは、正確に言えば彼は、老衰したからだを引き摺り、狂ってしまった妻を連れて、七坂の、打ち棄てられた焼却炉で、内側から蓋を閉めて油をかぶった。

 わたしは救出された人間で、そのまま婚約者の庇護を受けて暮らしていた。あとに残される人たちをうっかり憐れんでしまって、「今までありがとう」と口走ったのが、敗因だった
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